企業のポッドキャストを、動画でも撮るべきか。結論から言うと、すべての番組に動画が必要なわけではありません。話す人の表情や人柄、その場の雰囲気を見せることが目的の中心にあり、撮影の準備や映像の編集、確認の手間と費用を毎回かけ続けられる場合に、動画を検討するのが現実的です。
とはいえ、「見る」ポッドキャストが広がっているのも確かです。国内の調査では、ポッドキャストを聴くときに使われているサービスは YouTube が最も多く、利用者の7割以上が月に1回以上、映像つきのポッドキャスト(ビデオポッドキャスト)を見ています。ただし、YouTube には撮影をしない静止画の動画でも番組を置けます。YouTube で届けることと、収録風景を撮影することは、分けて考えられます。
ポッドキャストは、「見られる」ものにもなっている
まず、ポッドキャストがどのように楽しまれているかを、国内の調査で確かめます。
76.2%月に1回以上、ビデオポッドキャストを見ている人(ポッドキャストの利用者のうち)
37.3%ポッドキャストを聴くときに使うサービスとして、最も多かった YouTube の割合
株式会社オトナル・朝日新聞社「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」。2025年12月5〜6日、全国の15〜69歳の男女10,000人と、ポッドキャストを月1回以上聴く800人へのインターネット調査[1]。この調査では、ビデオポッドキャストを「音声に収録風景などの映像を加えたもの」としています。オトナルはポッドキャストの広告事業などを手がける会社です。
海外の大手の配信サービスも、動画に力を入れています。YouTube は、2025年1月時点で、ポッドキャストの動画を見る人が月に10億人を超えたと発表しました[2]。Spotify は、2026年5月時点で、これまでに5億人以上の利用者がビデオポッドキャストを再生したと発表しています[3]。
ただし、これらの数字が示しているのは、ポッドキャストを「見る」人が増えているということです。企業の番組を動画にすれば聴く人が増える、ということまでは示していません。
また、同じ国内調査では、ポッドキャストを何かをしながら聴く「ながら聴き」の人も80.8%いました[1]。映像つきの番組を見る人が多い一方で、画面から目を離して聴く場面も多いということです。動画で配信する場合も、耳だけで聴く人がいることを前提に番組をつくります。
ビデオポッドキャストには、3つの形がある
ひと口に「動画にする」といっても、手間のかけ方によって、大きく3つの形があります。
| 形 | どんなものか(手間) | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 静止画と音声 | 番組のアートワーク(番組の顔になる正方形の画像)などに、音声をのせた動画(撮影はいらない) | YouTube で探す人の目にも、番組がふれるようにする |
| 収録風景の動画 | 収録の様子をカメラで撮り、音声と合わせた動画(毎回、撮影と映像の編集がいる) | 話す人の表情や人柄、場の雰囲気を見せる |
| 短い切り抜き動画 | 本編から印象的な場面を数十秒〜1分ほど切り出した、縦長の動画(本編から毎回編集する) | SNS で番組を知ってもらう |
静止画と音声の形は、撮影の手間がかかりません。YouTube には、音声のポッドキャストの配信用データ(RSS フィード)を登録すると、番組のアートワークを使った静止画の動画をエピソードごとに自動でつくり、チャンネルに載せる仕組みがあり、日本でも使えます[5]。登録してしまえば、音声の配信とほぼ同じ手間で YouTube にも番組を置けるため、まずこの形から始められます。
収録風景の動画は、話す人の表情や身ぶり、出演者どうしの空気まで伝えられる形です。そのぶん、撮影と映像の編集が毎回必要になります。短い切り抜き動画は、本編を見てもらうための入口として使います。
動画にすると、毎回増えるもの
収録風景の動画にする場合、音声だけの番組に比べて、次のような手間が毎回増えます。
- 撮影の準備:カメラと照明を置く場所を決め、マイクやケーブルの映り方を整えます。背景に、ホワイトボードの書き込みやパソコンの画面、社外に出せない資料が映っていないかも確かめます
- 出演者の準備:服装や身だしなみを整えます。音声なら出演できる人でも、顔を出すとなるとためらうことがあります
- 映像の編集:複数のカメラの映像の切り替え、字幕、サムネイル(一覧に表示される画像)の作成が加わります
- 確認:音声に加えて映像も確認します。映り込み、表情、字幕の誤字など、見る点が増えるぶん、確認の時間も長くなります
- 同意:出演者の映像を、どこで、いつまで使うかを、出演者と決めておきます

これらは1回だけの手間ではなく、配信のたびにかかります。短い切り抜き動画も、場面を選び、縦長に編集し、字幕を付ける手間が、1本ごとにかかります。番組を続けられるかどうかは、こうした手間を配信のたびにかけ続けられるかにかかっています。
オトポートでは
オトポートでは、収録風景を撮影するビデオポッドキャストの制作(料金表での名前は「動画ポッドキャスト制作」)と、短い切り抜き動画の制作を、音声の制作に追加するオプションとして受けています。料金の目安は、ビデオポッドキャストが1本あたり8万円から、短い切り抜き動画が1本あたり3万円からです(いずれも税別。2026年10月時点)。
たとえば月に2本の番組をすべて動画にすると、音声の制作費とは別に、1年で24本分(8万円×24本=192万円から)がかかる計算です。音声の制作費は料金プランで公開しています。
自社の番組に動画が必要か、3つの問いで判断する
ここまでを踏まえて、自社の番組を動画にするかどうかを、3つの問いで判断する流れにまとめます。
自社の番組を動画にするかを決める3つの問い
収録風景の動画を撮るかどうかを決める目安です。上の問いから順に答え、「いいえ」の場合は、その段で判断が決まります。
番組の目的に、話す人の表情や人柄、その場の雰囲気を見せることが入っているか
いいえ音声で始める。YouTube にも置きたい場合は、静止画と音声の動画にする
はい次の問いへ
出演者は、顔を出して話すことに納得しているか
いいえ音声で始める(顔を出したくない人への対応は、下のよくある質問を参照)
はい次の問いへ
撮影・映像の編集・確認の手間と費用を、毎回かけ続けられるか
いいえ音声で始め、特に見せたい回だけ撮るか、短い切り抜き動画から試す
はい次へ
結論収録風景の動画を検討する。そのうえで、映像を見なくても話が分かる番組にしておく
1つ目の問いで「はい」になりやすいのは、採用のために社員の人柄や職場の雰囲気を伝える番組や、経営者の考え方を本人の表情とともに届けたい番組です。反対に、専門知識の解説が中心の番組は、図や画面を見せたい場合を除けば、音声だけでも伝えられることが多くあります。
2つ目の問いは、会社の都合だけでは決められない点です。出演者が納得しないまま顔を出してもらうと、出演を続けてもらいにくくなります。出演者を決める段階で、映像も撮るかどうかを伝えておきます。
3つ目の問いでは、最初の数回だけでなく、1年続けた場合の手間と費用で考えます。費用の比べ方は、記事「ポッドキャスト制作会社の選び方は?見積もりの前に確かめる7つのこと」で紹介しています。
動画を撮るときも、音声だけで分かる話し方にする
動画にする場合も、音声だけで聴く人がいることを前提にします。先に紹介した「ながら聴き」の人に加えて、Apple Podcasts などで音声だけを聴く人もいるためです。
映像があると、つい画面に頼った話し方になります。次のような言い方は、音声だけで聴く人には伝わりません。
- 「こちらをご覧ください」「この資料のとおり」と、映っている物を指す
- 「これくらいの大きさ」と、手で示す
- 出演者がうなずくだけで、言葉で答えない
映っている物について話すときは、「売上が前の年の2倍になったグラフです」のように、何が映っているかを言葉にします。うなずくだけでなく、「そうですね」と声に出して答えるように、出演者に伝えておきます。
また、カメラを意識すると、話す人がマイクから離れてしまうことがあります。マイクの置き方は、記事「会議室でポッドキャストを収録するには?音の失敗6つと、その場でできる対処」で紹介しています。
迷ったら、手間の少ない形から順に足す
判断の流れで「はい」が続いても、いきなりすべての回を動画にする必要はありません。手間の少ない形から順に足していけば、番組を止めずに切り替えられます。
- 音声で始め、YouTube には静止画と音声の動画で置く
- 聴かれ方を見ながら、反応のよい回から短い切り抜き動画をつくり、SNS で試す
- 番組を続ける体制ができ、映像で見せたいものがはっきりしたら、収録風景の動画を検討する
最初から動画を撮らない場合でも、あとから動画を足す可能性があるなら、2つのことを始めの段階で決めておくと、切り替えがしやすくなります。1つは、カメラを置く余地のある部屋で収録することです。もう1つは、出演者に、将来は映像を撮る可能性があることを伝えておくことです。
よくある質問
Apple Podcasts や Spotify でも、ビデオポッドキャストは見られますか?
Spotify は、すでにビデオポッドキャストに対応しています[3]。Apple は2026年2月に、Apple Podcasts のアプリで動画を横向きの全画面で見たり、ダウンロードしたりできる新しい仕組みを発表しました[4]。ただし、どちらも動画を配信できるかは、番組の音声や動画を置いて配信先に届けるサービス(ホスティングサービス)によって異なります。使っているサービスの案内で確かめてください。
YouTube だけで配信してもよいですか?
国内では、ポッドキャストを聴くときに使うサービスとして YouTube が最も多く使われています[1]。一方で、Apple Podcasts や Spotify で聴く人もいます。
届けたい相手がどのサービスを使っているかが分からないうちは、音声の配信先と YouTube の両方に置いておくと、どちらの人にも届けられます。先に紹介した YouTube の RSS フィードの登録を使えば、YouTube に置く手間はほとんど増えません[5]。
顔を出したくない出演者がいる場合は、どうすればよいですか?
無理に顔を出してもらう必要はありません。その人の回は音声だけにする、手元や資料だけを映す、といった方法があります。番組全体を動画にするかどうかよりも、出演者が安心して話せることを優先します。
出典
- 株式会社オトナル・朝日新聞社「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」(2026年2月25日公表。2025年12月5〜6日、全国の15〜69歳の男女10,000人およびポッドキャストを月1回以上聴く800人を対象としたインターネット調査)
- YouTube Official Blog「Drop the mic: Celebrating 1 billion monthly podcast users on YouTube」(2025年2月26日)
- Spotify Newsroom「Spotify Levels Up Our Podcast Experience With New Features for Fans and Creators」(2026年5月21日)
- Apple Newsroom「Apple introduces a new video podcast experience on Apple Podcasts」(2026年2月16日)
- YouTube ヘルプ「RSS フィードを使用してポッドキャストを配信する」
