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採用広報にポッドキャストは使える?
候補者の疑問から企画を立てる方法

採用広報にポッドキャストを使うときの考え方を整理します。
候補者が入社前に知りたいことから企画を立てる方法、ギャップを話す回の進め方、社員に出演してもらうときに決めておくこと、応募前・選考中・内定後の案内の仕方を紹介します。

田島 一希株式会社オトポート 代表取締役

この記事の要点

  1. 入社後に感じた悪いギャップの上位は「仕事内容」39%と「職場の雰囲気」38%(2024年の調査)。声はここを補える
  2. 企画は会社の魅力からではなく、候補者が入社前に知りたいことから逆算する。ギャップや大変なことを話す回が判断の材料になる
  3. 社員の出演では、公開の範囲と退職したあとの扱いを、始める前に決めて書面に残す

求人票や採用サイトを読み込んでも、候補者に最後まで分からないことがあります。一緒に働く人がどんな話し方をするのか、職場にどんな空気が流れているのか、といったことです。採用広報にポッドキャストを使う意味は、こうした「文章では伝わりにくいこと」を、社員の声で、応募を考えている人に届けられる点にあります。

番組を採用に役立てるには、企画を会社の魅力からではなく、候補者が入社前に知りたいことから立てることが大切です。ギャップや大変なことも含めて社員が話す回は、候補者が自分に合う会社かどうかを判断する材料になります。そのうえで、応募前・選考中・内定後と、採用の段階ごとに合う回を案内します。新卒・中途のどちらの採用にも使える考え方です。

入社した人が感じたギャップは、仕事内容と職場の雰囲気

まず、入社した人がどんなギャップを感じているかを、調査で確かめます。

87%入社後にギャップを感じた経験がある人

39%悪いギャップを感じた項目として「仕事内容」を挙げた人

38%悪いギャップを感じた項目として「職場の雰囲気」を挙げた人

エン・ジャパン株式会社「入社後ギャップ」調査。2024年5月3日〜6月9日、同社の転職サイト「AMBI」を利用する39歳以下の人へのインターネット調査(回答者929人)[1]。ギャップの項目は複数回答。

同じ調査で、入社前にどんな情報を確かめておけばよかったかを聞いたところ、最も多かった答えは「社員面談」で、39%でした[1]。実際に働いている人から、直接話を聞きたかったという人が多いということです。

仕事内容や職場の雰囲気は、文章や写真だけでは伝わりにくい情報です。採用サイトの社員インタビューは、文章に整えられるぶん、話し方の癖や、言葉を選ぶときの間、同僚とのやりとりの空気が削ぎ落とされます。

ポッドキャストでは、社員が自分の言葉で、15分、30分と時間をかけて仕事を語ります。社員どうしの対談であれば、2人の関係性や会話のテンポも、そのまま伝わります。質問ができる社員面談の代わりにはなりませんが、面談や面接の前に、社員の話し方や考え方を知る手がかりになります。

企画は、候補者の「入社前に知りたい」から逆算する

採用の番組の企画では、候補者が入社前に抱く疑問を書き出し、その疑問に答えられる人と話の形を決めます。会社の魅力を伝える回ばかりにすると、候補者が本当に知りたいことに答えられないためです。

候補者が知りたいこと回の企画の例出る人の例
どんな会社で、何を期待されるのか事業の方向と、新しく入る人に期待することを話す経営者、部門の責任者
入社したら、毎日どんな仕事をするのかある1日の仕事を、朝から順に話してもらう入社2〜3年目の社員
どんな人たちと働くのか同じチームの2人が、お互いの仕事ぶりを話す同じチームの先輩と後輩
入社してみて、何がギャップだったか入社前の印象と、入ってみて分かったことを比べる入社1年目の社員、中途で入社した社員
大変なことや、うまくいかなかったことはあるか失敗した仕事と、そこから変えたことを話す中堅の社員
どう成長していけるのか入社してからの仕事の変化と、これからの目標を話す入社5年目前後の社員、管理職

表の中でも、「何がギャップだったか」「大変なことは何か」の回は、会社の側からは出しにくいかもしれません。しかし、候補者が知りたいのは、まさにこうした話です。良い面だけでなく、大変な面も含めて話してもらうことで、候補者は入社したあとの自分を具体的に想像し、自分に合うかどうかを判断しやすくなります。

架空例:「入社してみて、何がギャップだったか」の回の進め方

ギャップを話す回は、聞き手の質問の順番で、話しやすさが大きく変わります。いきなり「ギャップは何でしたか」と聞くより、入社前の印象から順に聞いていくほうが、出演者は経験を思い出しながら話せます。

説明用の架空例

IT サービスの会社が、中途で入社して1年目のエンジニアに、20分ほどの回に出てもらうとします。聞き手(採用担当者)は、次の順番で質問します。

  1. 前の職場では、どんな仕事をしていましたか
  2. この会社に応募する前は、どんな会社だと思っていましたか
  3. 入社してみて、思っていたとおりだったことは何ですか
  4. 反対に、入ってみて初めて分かったことや、戸惑ったことは何ですか
  5. 戸惑ったことに、どう慣れていきましたか。周りの人はどう関わってくれましたか
  6. いま応募を考えている人に、入社前に知っておいてほしいことは何ですか

4つ目の質問の前に、3つ目で「思っていたとおりだったこと」を聞いておくと、出演者は良い面と戸惑った面を比べて話しやすくなります。5つ目で、戸惑いにどう向き合ったかまで聞くと、職場の人の関わり方も自然に伝わります。

社員に出てもらうときに決めておくこと

採用の番組には、社員が業務として出演します。次のことを出演の前に決め、本人と確かめておきます。

  • 出演の同意と、公開の範囲:名前(フルネームか、名字だけか)、部署名、番組のページや SNS で紹介するときに顔写真を載せるかどうか
  • 退職したあとの扱い:出演した社員が退職した場合に、その回を公開し続けるか、取り下げるか
  • 話さないこと:社外に出せない情報、ほかの社員や取引先が特定される話、本人が話したくない私生活のこと
  • 確認の機会:配信の前に、本人が完成した音源を聴き、気になる部分を相談できるようにしておく

決めたことは、同意書などの書面に残しておくと、担当者が替わっても確かめられます。採用の番組は、配信した回が長く聴かれるぶん、出演した社員が退職したあとも残ります。退職したあとの扱いは、番組を始める前に方針を決め、出演する社員に伝えておきます。

「大変なことを話す回」に出てもらう場合は、話す内容を本人と事前に相談します。会社への不満を言わせる場ではなく、うまくいかなかった経験と、そこからどう工夫したかを話してもらう場だと伝えると、本人も話しやすくなります。

採用の段階ごとに、合う回を案内する

採用の番組は、Apple Podcasts や Spotify などに公開し、誰でも聴ける形にするのが基本です。そのうえで、採用サイトに載せておくだけでなく、候補者が会社と接する場面ごとに、合う回のリンクを案内します。リンクはスマートフォンでそのまま開けるため、メールや SNS に添えておけば、関心を持った候補者がその場で聴けます。

採用の段階ごとの、番組の案内の例

段階ごとに、案内する場面と、合う回の例を示しています。段階の分け方や案内する回は、会社の採用の進め方に合わせて決めます。

  • 案内する場面
  • 合う回の例
  1. 応募前(会社を知る)

    案内する場面採用サイト、求人の掲載ページ、会社説明会の案内、社員の SNS

    合う回の例事業の方向と期待すること、ある1日の仕事

  2. 選考中(自分に合うか確かめる)

    案内する場面面接の日程の連絡、面接のあとのお礼のメール

    合う回の例チームの2人の対談、入社後のギャップの回

  3. 内定後(入社を決める)

    案内する場面内定の連絡、入社までの案内

    合う回の例大変なことを話す回、配属先の先輩が出る回

出典:オトポートの考え方をもとに作成した例

ギャップを話す回は、候補者が自分に合うかを確かめる選考中に案内すると、判断の材料として生きます。内定後は、入社するかを最終的に決める時期です。配属先の先輩が出る回や、大変なことにどう向き合ったかを話す回は、入社後の不安を具体的にして、減らす手がかりになります。

番組が採用に役立っているかは、応募の数だけでは分かりません。面接で候補者から番組の話題が出たか、内定を承諾した人が番組を聴いていたか、を聞き取って確かめます。こうした変化は配信先の数字には表れないため、記録の残し方を番組を始めるときに決めておきます。

その考え方は、記事「ブランデッドポッドキャストとは?企業の番組がブランドづくりに効く理由と測り方」で紹介しています。社内でかかる時間の目安は、記事「企業ポッドキャストの運用工数は?月1回の収録と社内の役割分担」をご覧ください。

出典

  1. エン・ジャパン株式会社「20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査」(2025年1月15日公表。2024年5月3日〜6月9日、転職サイト「AMBI」を利用する39歳以下の人へのインターネット調査。回答者929人)

この記事を書いた人

田島 一希たじま かずき株式会社オトポート 代表取締役。2015年にポッドキャスト制作事業を始め、これまでに50番組・6,000エピソード以上の企画・制作に携わる。

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