企業がポッドキャストを始めるとき、最初に決めるのは「誰に、何を届けるか」と「誰が話すか」の2つです。そのうえで、番組の形(形式・長さ・配信頻度)、制作の進め方、費用と体制の社内合意、制作の準備、初回収録と配信の順に進めます。この記事では、この流れを7つのステップに分けて、社内の稟議で聞かれることとあわせて整理します。
始める前に:ポッドキャストが目的に合うかを確かめる
ポッドキャストは、話す人の声で、会社の考え方や専門性を時間をかけて伝えられるメディアです。通勤中や作業中に聴かれることが多く、配信した回は番組に残り続けます。
一方で、どんな目的にも合うわけではありません。次のような場合は、別の手段のほうが目的に近いことがあります。
- 3ヶ月以内に商談数を増やしたい:番組は配信を重ねて効いてくる施策です。短期間で成果を得たい場合は、広告や営業からの働きかけのほうが目的に近い手段です
- 毎月、収録に時間を割ける出演者がいない:編集や配信は制作会社が担えますが、話す人だけは社外から補えません
- 社外に出せる話がほとんどない:社内広報など、社内向けの番組であれば別の設計ができます(記事「社内向けポッドキャストの始め方は?社外向けとの違いと、社員だけに届ける方法」)
ステップ1:「誰に、何を、誰が話すか」を決める
番組の企画は、聴いてほしい相手を決めるところから始まります。採用候補者に社風を伝える番組と、顧客に専門知識を届ける番組では、話す内容も、出演者も、ふさわしい長さも変わるためです。
企業の番組の使い方には、たとえば次の4つがあります。
| 使い方 | 届けたい相手 | 番組で伝えること |
|---|---|---|
| 採用 | 応募を考えている人 | 一緒に働く人の考え方や、職場の空気 |
| ブランディング | 取引先・顧客になりうる人 | なぜこの事業をしているのか、何を大切にしているか |
| マーケティング | 見込み顧客 | 専門知識や、課題の解き方 |
| 社内コミュニケーション | 社員 | 経営の意図や、部署をまたいだ取り組み |
採用を目的にする番組の企画の立て方は、記事「採用広報にポッドキャストは使える?候補者の疑問から企画を立てる方法」で紹介しています。
相手が決まったら、その人に届けたい話を社内の誰が持っているかを考えます。経営者の考え方、現場の社員の経験、専門家としての知識など、話す人によって番組の性格が決まります。
あわせて、聞き手(進行役)を誰が務めるかも決めます。話し慣れていない人が出演する場合でも、聞き手が質問で話を引き出せば、出演者は自分の経験を思い出して答えることに集中できます。聞き手は、社内の広報担当者などが務めることも多くあります。
ステップ2:番組の形を決める(形式・長さ・配信頻度)
届ける相手と話す人が決まったら、番組の形を決めます。決めることは、形式・1本の長さ・配信頻度の3つです。
形式は、大きく次の3つに分かれます。
| 形式 | 特徴 | 向いている使い方の例 |
|---|---|---|
| ゲストインタビュー | パーソナリティ(番組の顔になる話し手)が、毎回ちがうゲストに話を聞く | 業界の専門家や顧客との関係づくり、採用で社員の声を届ける |
| 対談 | 決まった2人が、テーマについて話す | 経営者の考え方を、聞き手との会話の中で伝える |
| ひとり語り | 1人が、決まったテーマについて話す | 専門知識の解説。話し慣れた人に向く |
実際の企業の番組の例は、オトポートのサービスページでも紹介しています。
配信頻度は、出演者が月に何時間を番組に使えるかから逆算して決めます。収録と配信の頻度は同じでなくてよく、まとめて収録して少しずつ配信する方法もあります。その進め方は、記事「企業ポッドキャストの運用工数は?月1回の収録と社内の役割分担」で紹介しています。
動画でも撮るかどうかで迷う場合は、記事「ビデオポッドキャストは必要?音声だけで始めるか、動画も撮るかの決め方」の判断の流れが参考になります。
ステップ3:制作を依頼するか、自社でつくるかを決める
番組の形が見えたら、制作の進め方を決めます。費用も社内の体制も、ここで決まるためです。
| 比べる点 | 自社でつくる | 制作会社に依頼する |
|---|---|---|
| 社内で担う工程 | 企画・収録・編集・配信・聴かれ方の分析のすべて | 依頼する範囲による(企画から一括で頼めば、出演と完成した音源の確認が中心) |
| 必要になるもの | マイクなどの収録機材、編集ソフト、配信用のホスティングサービス、編集できる人の時間 | 制作会社との打ち合わせと、収録日の時間 |
| 費用の出方 | 機材・ソフト・サービスの費用と、担当者の人件費 | 立ち上げの費用と、毎月の制作費 |
自社でつくる場合に、最低限そろえるものは次のとおりです。
- マイクとヘッドホン:話す人ごとにマイクを用意すると、声の大きさを後から整えやすくなります
- 収録する部屋:声が反響しにくい部屋を選びます。壁がむき出しの広い会議室より、カーテンや家具のある小さめの部屋のほうが声がこもりにくくなります
- 編集ソフト:不要な間や言い淀みのカット、音量の調整に使います
- ホスティングサービス(しくみはステップ5で説明):選ぶときは、Apple Podcasts や Spotify への登録のしやすさ、聴かれ方の統計が見られるか、料金を比べます

自社でつくる場合は費用を抑えやすい一方、編集や配信を担う人の時間が毎月必要になります。担当者が異動したり忙しくなったりしたときに、番組が止まらない体制を組めるかも考えておきます。制作会社を比べるときの確認項目は、記事「ポッドキャスト制作会社の選び方は?見積もりの前に確かめる7つのこと」にまとめています。
ステップ4:社内稟議で、費用・体制・効果の見方を説明する
制作の進め方が決まったら、社内の合意を取ります。稟議でよく聞かれるのは、費用・体制・効果の見方の3点です。
費用:立ち上げの費用と、毎月の費用を分けて示す
制作会社に依頼する場合、費用は初回だけかかる立ち上げの費用(企画・番組名・アートワーク・配信先の設定など)と、毎月かかる制作の費用(収録・編集・配信)に分かれるのが一般的です。稟議では、この2つを分けたうえで、「立ち上げの費用+月額×運用する月数」で総額を示すと伝わりやすくなります。
月額は、1本の長さと月の本数、対面で収録するか、ゲストを招くかなどで変わります。
説明用の架空例
立ち上げの費用が15万円、月額が20万円の見積もりで、1年間運用するとします。総額は、15万円+20万円×12ヶ月=255万円です。稟議では、この総額と、月に何本・1本何分の番組になるかをあわせて示します。
オトポートの料金は料金プランで公開しています。
自社でつくる場合も、機材やソフト、ホスティングサービスの費用に加えて、編集や配信を担う人の時間を費用として見積もっておくと、制作会社に依頼する場合と比べやすくなります。
体制:「出る人・決める人・回す人」を決めておく
稟議では、誰が出演し、誰が公開を判断し、誰が日程調整や社内の連絡を担うかを示します。あわせて、出演者と窓口の担当者が毎月どれくらいの時間を使うかも示しておくと、上司が判断しやすくなります。役割の分け方と時間の目安は、運用工数の記事で詳しく紹介しています。
効果の見方:見る指標と、判断する時期を先に決める
聴かれ方は、配信先の管理画面で確認できます。どの指標を見ればよいかは、企業の番組がブランドづくりに役立つ理由とあわせて、記事「ブランデッドポッドキャストとは?企業の番組がブランドづくりに効く理由と測り方」で紹介しています。
数字は配信を始めてすぐには安定しません。稟議の段階で「どの指標を、どの時期に見て判断するか」を決めておくと、評価の基準がぶれにくくなります。たとえば、配信開始から半年ほどたった時点で、フォロワー数と、一定以上聴いた人の数の推移を見る、といった決め方です。
ステップ5:番組名・アートワーク・配信先を準備する
社内の合意が取れたら、制作の準備に入ります。番組名、番組の紹介文、アートワーク(番組の表紙画像)、ジングル(冒頭の音楽)をつくり、配信先を開設します。
アートワークは、配信アプリの一覧で小さく表示されても番組名が読めるようにつくります。Apple Podcasts では、正方形で、1400×1400ピクセル以上、3000×3000ピクセル以下(3000×3000ピクセルを推奨)、PNGかJPG、透過なしが条件です[1]。
ポッドキャストは、ホスティングサービスに音声ファイルと番組の情報を置き、そこから発行される RSS フィード(番組の更新を配信アプリに知らせるデータ)を、Apple Podcasts や Spotify などに一度登録して配信します。登録したあとは、ホスティングサービスに新しい回を追加するだけで、各配信アプリに自動で届きます。
ステップ6:リハーサルをして、初回を収録する
初回の収録の前に、番組の構成や進行、話し方を確認するリハーサルをしておくと、本番で出演者が落ち着いて話せます。とくに初回は、出演者がマイクの前で話すこと自体に慣れていないことが多いため、収録の流れを一度通しておくと安心です。収録日までに用意しておくもの(話すテーマの候補や要点のメモなど)は、運用工数の記事で紹介しています。
収録は、静かな環境であれば会議室でもオンラインでも行えます。会議室で収録するときの音の失敗と対処は、記事「会議室でポッドキャストを収録するには?音の失敗6つと、その場でできる対処」で紹介しています。1回の収録で複数本をまとめて録っておくと、配信を始めてからも予定が組みやすくなります。
ステップ7:編集・確認を経て、配信を始める
収録した音源は、聴きやすく編集してから、社内で内容を確認し、公開してよいかを判断して配信します。
1本目の配信日から逆算して、社内の確認の期限も決めておきます。確認する人が多い場合は、誰がいつまでに聴くかを先に決めておくと、公開が遅れにくくなります。
初回配信までの流れと、社内・制作会社の分担
ここまでの7つのステップを、4つの段階にまとめて、社内と制作会社がそれぞれ何をするかを示します。
初回配信までの4つの段階と、社内・制作会社の分担
制作会社に依頼する場合の例です。( )内の期間は目安で、分担や期間は制作会社によって変わります。
- 社内(依頼する会社)
- 制作会社
企画(ステップ1〜3)
社内届けたい相手・話す人・予算の目安を伝え、提案と見積もりを比べる
制作会社ヒアリングと、番組の形・見積もりの提案(1〜2週間)
社内の合意(ステップ4)
社内費用・体制・効果の見方を説明し、稟議を通す
制作会社稟議に必要な資料や情報の提供
準備(ステップ5)
社内番組名・アートワークの確認、出演者の日程調整
制作会社番組名・アートワーク・ジングルの制作、配信先の開設(2〜3週間)
収録・配信(ステップ6〜7)
社内リハーサルと出演(収録は2〜3時間)、完成した音源の確認
制作会社進行・編集・配信(収録から初回配信まで最大3週間ほど)
始めたあとは、データを見ながら企画を見直す
番組は、配信を始めてからが本番です。オトポートが制作を担当した24番組の平均継続期間は3年10ヶ月です(2026年10月時点。終了した番組を含む)。続けるために大切なのは、収録を毎月の予定として固定しておくことと、聴かれ方のデータを見ながら企画を見直すことです。半年ほどたったら、よく聴かれた回とそうでない回を比べ、話題の選び方や長さを調整します。
最初の一歩として、次の4つを1枚の紙に書き出してみてください。
- 誰に聴いてほしいか(例:採用を考えている学生、既存の顧客)
- その人に何を伝えたいか(例:職場の空気、専門知識)
- 誰が話し、誰が聞き手を務めるか
- 1本の長さと、月に何本配信したいか
この4つが決まれば、番組の形も、稟議で説明する内容も決めやすくなります。
出典
- Apple Podcasts for Creators「Show Cover template」
